所有代名詞を使うべきか、冠詞を使うべきか それが問題だ! ネイティブが英文法の所有代名詞の使い方を説明します。

Luke

こんにちは、イギリス生まれ・東京在住、英語教師で作家のLukeです。今週、僕が書いたオノマトペ(擬態語・語音後)についての本 が出版されました。是非チェックしてみて下さい!

今回は、定冠詞、不定冠詞、と所有代名詞、この3種類の使い方や使い分けをもうさらに理解してもらうために、四つの文章を比べて説明します。冠詞や所有代名詞をきちんと使えるようになるのは、長い時間がかかると思いますが、以下の説明によって、皆さんが冠詞や所有代名詞を完璧に使えるという目標に少し近づいてくれればと思って書きました。
英会話では「What should I use here? The possessive pronoun 「所有代名詞」or the definite article 「定冠詞」?」という質問をよく耳にします。例えば、「彼女は腕に痣ができた」という英語を訳すと、何と言えばよいのでしょうか? まず考えないといけないのは、両方の腕だけに痣が出来たのでしょうか?あるいは、片方の腕だけに痣が出来たのでしょうか?答えによって、複数形か単数形を使うかどうかを決めます。彼女の一つの腕だけに痣が出来たとすれば、以下の四つの選択肢があります。

1.She says her arm is bruised.  所有代名詞
2.She says she has a bruised arm.  不定冠詞
3. She says that the arm is bruised.   定冠詞
4. She says she has the bruised arm. 定冠詞 
訳:彼女の腕には痣ができた。

これら四つの文章にはそれぞれ微妙に違う意味がありますので、一つずつの文章で違う使い方をしています。
例1では、所有代名詞を使っています。「her arm」は単数ですので、一つの腕を示しています。または、「her arm」は「the arm」と同様に「特定した腕」を示しています。
なぜならば、所有代名詞は一つ以上の物がある時には一つの決まった物を示すからです。そこで、相手がどちらの腕が傷ついていることが既に分かっている場合には、この言い方が適切です。相手が傷ついた腕がどちらかまだ分からない場合、所有代名詞を使うと、相手は混乱してしまいます。
一方、例2では、不定冠詞が使われていますので、どちらの腕に痣が出来たのか決まっていない場合に使います。そこで、誰かが自分の腕や他の人の腕が傷ついたことを知らせたい時には、まず不定冠詞を使います。そのあとで、所有代名詞か定冠詞の、どちらでも使うことが出来ます。以下の会話では、これをさらに上手に説明が出来ます。

Doctor: What happened?
医師:どうしたの?
Mother: She has a bruised arm.
母:彼女の腕に痣ができたんです。
Doctor: Can I take a look?
医師:ちょっと見せてもらえますか?
Mother: Jane, show the doctor your arm.
母:ジェーン、お医者さんに腕を見せて。
Jane: Okay, it hurts right here.
ジェーン:はい。ここが痛いです。
Mother: What do you think?
母:どう思いますか?
Doctor: Well her arm is certainly banged up a bit, but I don’t think it’s broken.
医師:腕はたしかに少し打撲しているようですが、骨折はしていないと思いますよ。

この会話では、まず不定冠詞が使われています。次は、母が娘に「your」という所有代名詞を使います。母はもうどちらの腕が傷ついているのか既に分かっていますので、所有代名詞を使えます。それで、ジェーンはお医者さんにどちらの腕かを教えます。その時から、お医者さんは「her」という所有代名詞を使います。 実は、最後の文章では、お医者さんは、「Well the arm is certainly banged up a bit, but I don’t think it’s broken.」というような定冠詞を使っている文章とも言えますが、人の部分に対しては、「the」の定冠詞を使うのは、少し冷たい感じがします。「the」を使うと、患者は人間ではなく、ただの物体みたいですので、この場合、「her」という所有代名詞のほうが優しく感じられます。それは例3「She says that the arm is bruised.」の使い方と同じですね。上の例と同様に例3は定冠詞を使い、少し冷たい感じを与えてしまいます。
最後は、例4「She says she has the bruised arm.」の文章です。このような文章は英語であまり使いません。この「has」と定冠詞の組み合わせはネイティブにとって、とても変な感じがします。しかし、特殊な文脈では、この言い方が使えます。可能性がある例を挙げます。病院の部屋では、10人が待っています。医師が部屋に入ります。医者は看護師から誰かの腕には痣が出来ているという知らせを受けましたが、その10人の中では、誰だか分かりません。医者は、「Who has the bruised arm?」と聞いて、その中の一人が別の人を指差して、「she has the bruised arm.」と言えます。この場合、は医者が既に分かっているのは、その10人の患者の腕の中で一つだけが傷ついているということですが、誰が傷ついているのかが分かりません。それが例4を使えるケースの一つですが、そういうケースはあまり出てきません。
ちなみに、英語には、八つの所有代名詞があります。それは、mine, yours, his, hers, its, ours, theirsとwhoseです。

4 件のコメント

  • I didn’t know the difference between ” her arm ” and “the arm”, so I ‘m so glad that I learned it here.
    I found the following sentence in a textbook.
    “Let’s take the kids to the aquarium.”( a couple talks about their kids)
    In this case, does ” Let’s take our kids to the acquarium.” sound unnatural as the kids must be obviously theirs?

    • Hi Lily,
      Thanks a lot for the comment. The example from the textbook is perfectly fine. In fact, “the” is probably better than “our”. In this case the parents already know who their children are and so using the personal pronoun seems somewhat unnecessary. This is not the case with body parts, as in the post. Parents would still refer to one of their children’s body parts using the personal pronoun. For instance, “look at her hand”.

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    記事を書いたLukeについて

    英語の教師と作家。父はイギリス人、母はアメリカ人。イギリス生まれ、13歳でアメリカへ。卒業後はワシントンDCで記者。現在東京に在住。著書に『この英語、どう違う?』(KADOKAWA)、『とりあえずは英語でなんと言う?』 (大和書房)、など。NHK基礎英語1と婦人公論の連載。